2004年 12月 〜 師走の“たわごと”



12月31日(金)

この仕事には、盆、暮れ、正月は、ほぼ無い。
身内の冠婚葬祭にも、なかなか出られない。
それが当たり前だった。
そういう生活をずっと送ってきたから、
一年前の年越しに、めずらしくすぽっとお休みがとれたのは、
ちょっと不思議だった。

一体、何年ぶりになるのか、大晦日に実家に顔を出し、
退院してきたばかりの父とふたりきりで、
紅白歌合戦を見た。

「これ、いい歌だね〜」
「うぁ、すごい衣装だ」「ほんと、この人は歌うまいよね」
たわいもないことを話しながら年越しそばを食べた。
除夜の鐘が、煩悩の数だけ鳴った。
「はい、あけましておめでとう」
「ほい、おめでとう」
後にも先にも、
父とふたりだけのこんなに静かな年越しは、初めてだった。

今年、その父は、もう居ない。

昼過ぎから降り出した雪は、
あっという間に大晦日の東京を白く染め上げている。
喪中の私は、正月飾りも年賀状も用意せず、
明日の初仕事の為に、
いつもように、大荷物を玄関に用意して
ひとり、自分のアパートで、年越しそばを食べ、紅白を見ていた。
いつの間にか、泣いていたのは、
画面から流れる歌のせいなのか、
蕎麦に入れすぎた七味の仕業なのか…。

「トウサン、アタラシイトシガアケタヨ。ワタシハマタヒトツ、トシヲトッタヨ」